2021.10.26

Guernsey Sweater

こんにちは。

前回前々回とアランニットフェアアイルセーターと続けて紹介してきました。
本日は英国3大セーターの最後のひとつ、実は元祖フィッシャーマンニットといわれる伝統的な『ガンジーセーター』を紹介いたします。

こちらがガンジーセーター。またはガーンジーセーターとも呼ばれます。見た目はシンプルでアランやフェアアイルのような華やかさはありませんが、ガンジーセーターの魅力は機能性。

先程も言いましたが、ガンジーセーターは元祖フィッシャーマンセーター、つまり漁師さんの仕事着です。

これは同じ写真をふたつ並べているわけではなく、前後の写真です。
ガンジーセーターの大きな特徴のひとつが前後の無いデザインだということ。
この前後対称の作りは、汚れたら前後を裏返して着用できるという作業着としての利便性に長けたデザインです。また明りの少ない船の上でも前後を気にせず着用でき、漁師さんにとってとても快適な服でした。

吸い付くようなタイトなシルエットもガンジーセーターの特徴のひとつ。
厳しい寒さの過酷な環境で働く彼らのために生まれたセーターなので、防水防風のためぴたっと隙間のないサイズ感でした。
また「シーメンズ・アイアン(船乗りの鎖)」と呼ばれるほどタイトに編み込まれており、使用する糸もきつく撚られた頑丈なものを使う防寒への徹底ぶり。

しかし熱を逃がさないようにするだけでなく機能性にも優れているのがガンジーセーターです。
タイトなシルエットでも動きやすさを確保するべく脇にはダイヤモンドガゼットいうひし形のマチが付いていたり、裾にはスリットが入っていたり。
この高い機能性がかわれて、ガンジーセーターはイギリス軍でも採用されていました。

フィッシャーマンセーターの元祖と呼ばれるガンジーセーターは、実用性・機能性に特化した海の男のユニフォームだったわけです。
生まれたのはイギリスとフランスの間に浮かぶガンジー島。
アランやフェアアイルと同様に島から名前を取っていますが、そもそも起源自体が曖昧で場所によってはガンジー(ガーンジー)、ジャージー、ジャンパーと呼び名も明確に定まっていなかったようです。

漁師さんの家族が手編みで編んだガンジーセーターは、家ごとに編み模様が違っていました。
アランセーターも編み模様に意味が込められていましたがガンジーも同様、ロープや錨、ニシン、波など漁や村にまつわるモチーフが編まれており家紋のようなものでした。
そして漁師さんたちはみんなガンジーセーターを誇りに思っており、海でも陸でも関係なく身に着けていたそうです。

ちなみに仕事着とは別に、より一層複雑な編み模様の特別なガンジーセーター「サンデー・ベスト」を持っており、結婚式などで一張羅として着用していました。
漁師さんたちにとってそれは仕事着であり、礼服でもあったのです。

長々とご紹介してしまいましたが、いかがでしたか?
知れば知るほど面白いガンジーセーター。
飾りっ気のないシンプルな漁師さんのユニフォームには誇りと愛情が詰まっており、そこからフィッシャーマンセーターの歴史が始まりました。

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ライター:aoki